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秋晴れの晴天に恵まれ 幼稚園最期の運動会の日を迎えた。私はクラス対抗リレーの選手に選ばれていたので朝から 張り切って洗いたての体操服に着替えていた 「今日 見に行けないんだ ごめんね」えっ、昨日までは見にきてくれるって言ってたのに 「お腹痛いの?」「仕事になってしまったんだ お母さんや おばあちゃんもいるからいいよね」本当は リレーで走る姿を見てほしかったけど 仕事では仕方ないな がっかりした私に「これ 持っていきなさい」それは小さな鈴のついたお守りだった「優勝出来ますようにがんばれよ」私はそのお守りをギュッと握りしめると 泣きそうになるのを 懸命にこらえた。「ありがとう 頑張るよ 絶対優勝するから」父は私の頭を撫でると 仕事に出掛けて行った。その背中は子供心に 痩せたなぁと 父は食欲も以前の半分に減っていたしたまに 吐く事もあった。気力で頑張っているとしか思えない。どうして 病院に行かないの?私は 母と祖母と 最期の運動会に出掛けた。園庭では 子供の晴れ姿を写そうとカメラを持ったお父さん達が 最前列を陣取って 座る場所がない ようやく リレーのスタートライン前に 空いた場所を見つけて 母と祖母は 腰を下ろした。私はクラス別に整列して 入場の時間を ワクワクしながら待っていた。「お父さんが 来てくれたらなぁ」ふと頭の中を父の背中がよぎる。バ~ンバ~ン 運動会開始の花火が上った。入場行進のマーチが 流れはじめた。私は胸を張り精一杯の笑顔で 行進を始めた。
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