宣告

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担当主治医から病状についての説明があると 母と叔父が医局に呼ばれた。「ご主人は胃癌です 食道にも転移がみられ 通過障害を起こしています。手術は不可能です。今後は 制癌剤の治療と 中心静脈栄養という 治療に 切り替わります。しかし うちの病院では 完全なケアが出来ないため 県立病院へ転院の手続きをとりました…」母は頭の中が真っ白になり倒れそうだったと言ってました。父の癌はすでに手遅れで 末期癌だったのでしょ。症状が出始めた時 治療していたらもしかしたら 助かったのかも知れない。 学校が終りいつものように 病室に行くと母と叔母が荷物の整理をしている。「退院できるんだ!」まだ子供の私は てっきり父が退院出来るものと思い「お父さん退院するのいつ?明日?」疲れきった顔をした母が 廊下に私を 呼び出した。「お父さんね 明日県立病院に転院するの今度の病院は遠いから学校が休みの時に おいで」一瞬何の話しをしているのかよく理解出来なかった。もう病院には行けないんだ。 「転院などしないぞ だったら 家に帰る どうせ死ぬなら家で死ぬ」「義兄さん 何言ってるの 良くなるために大きな病院に移るだけでしょ?マリのためにも頑張るって言ってたじゃないの」父の気持ちも 母や叔母の気持ちも わからない。わかりたくない。死ねって何?お父さんは死なないよ。笑顔で アイスクリーム買いに行ったじゃない 元気になるって言ったじゃない みんな嘘つきだ。私にだけ本当の事を話してくれない。大人はズルイよ。私のお父さんだよ。ちゃんと話してよ。その日は父にまた来るねの挨拶と 握手もせずに 叔母の家に戻ってしまった。
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