前兆

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クリーニング店を経営する父と 店を手伝う母との間に長女として生まれた。母が難産だったため 次の子供は 諦め一人娘としてわがままに育てられた。歩行機から落ちて頭を 打ち両親に心配をかけたり 祖父母から届いた 雛人形の首を取ってみたり 悪戯の数々をつくした。それでも 父はいつも心配し 困ったように笑いながら 人形を一体一体直していく…あとから母から聞かされて 私って なんて乱暴な子供だったんだろうと苦笑いしたものだ。そんな時 今の店を親戚の人に譲り 近くの町に家を建てる話しがでた。その頃住んでいた店は手狭だったので 両親は 家を建てる決心をしたのだ。私には殆ど記憶にない 生まれ育った家と店。私が3才の時に 家が完成して 新しい家での生活が始まった。しかし 父はその頃からよく胃の痛みを感じて 胃薬を飲むようになった。引越しの疲れや 新しい環境の変化だと周りの誰もが そう思っていた。それが最悪の結末をもたらす事になる前兆とは知らずに。
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