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「あんな思いは、もう、いやだ。」
さなこの訃報を聞いたときの、耳鳴りがはじまった。
このままいくと、堪えられないような頭痛になる。
頭から、脳味噌や、悲しみ、さなこの記憶が流れ出てくるようなのだ。
「あなたはもっと、喪失ということと、うまく付き合うべきですわ。」
妻が私の手の上に自分の手を重ねた。ひんやりとした、なめらかな手だった。
そして、妻は私に接吻をすると、掠れた声で、
ささ、床へ参りましょう、と囁いた。
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