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先妻さなこの友人、澄香さんが訪ねてきた。
「近くに来たものだから、さなこにお線香でもあげようかと思って。」
そういうと、しゃきしゃき玄関から家の中に上がり込んできた。
手にはさなこの好きだったかすみ草の束を下げている。
澄香さんはさなこの学生時代の友人である。
一番の親友だった。
結婚前、付き合い始めてからしばらく経った頃、さなこが難しい顔で言った。
「今日はわたしの親友の澄香に会わせるわ。」
「親友ね。」
さなこは手にしたアイスコーヒーのストローの袋をぐるぐるの玉に仕立て上げながら、
鼻の下を伸ばしたり縮めたりした。
「澄香は少し変わった人だから、妙なこと言ってもあまり気にしないでね。」
「いや、君で慣れているよ。」
「ううん。」
さなこが唸り、それとは少し違うのよね、
と腕を組んで考え込み始めた時、喫茶店のガラス扉がばたんと開いて女の人が飛び込んできた。
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