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その金髪の色彩と、立ち姿に、ニズリーとアダレンは見覚えがあった。
そう、これは―――。
「まさか……」
女はにぃと笑った。
「ご機嫌よう!お父上、お兄上!!よい夜ですね」
「エルメダ!!お前、何のつもりだ!!」
赤いドレスの女―――改め、男は結わえていた金髪をほどく。
見事な曲線を描いておちたそれは緩やかなウェーブがかかっている。
アダレンの罵声を無視してエルメダは国王に顔を向け、微笑んだ。
「お誕生日、おめでとうございます。これからもお健やかで」
「……粋狂なことを…息子よ」
第三王子、エルメダは大きな目を細めた。
「ずっと座りっぱなしの父上を少しでも楽しませようと思いまして――」
「確かに楽しませてもらったが――王族であるぞ」
エルメダは肩をすくめた。
「それでは王族の自覚を持つために、着替えて参ります。エルゼウス、行こう」
「はい。失礼します」
歩き始めていたエルメダはふと足を止めた。
「ニズリー兄上、顔色がよいですね」
ニズリーは一瞬きょとんとしてから笑んだ。
「あぁ。楽しませてもらったよ、エルメダ」
第三王子はまた笑って歩くのを再会した。
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