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日中も光があまり入らない森の中に、そのあばら家はあった。
あばら家ではその主と、澄んだ湖の水を飲む白馬の主が対峙している。
前者は長く生きた深さが伺えた皺をもつ老人だ。
後者は純白の甲冑を纏い、長い金髪を三編みにしている女性である。
「…騎士団の方がそのような…」
「無駄足だと言うか?だが女王陛下はそれがお望みなのだ」
騎士は一冊の本をテーブルに置いた。
「処女王。この女王のことを知りたいと」
池で魚が跳ねた。
水面が音をたて、波紋を作る。
酷く、静かだった。
「…今女王陛下は悩んでおられる。同じ女王として、この十二代目女王のことを少しでも知り、参考にしたいらしい。――名前すら分からぬ女王にすがるほど、陛下は悩んでおられるのだ」
老人は、目を細めた。
「……処女王の話をしたところで、女王陛下の参考になるとは思えません」
「それは貴殿が決めることではない」
「……処女王は賢君ではございません」
「そんなことはこの本に書いてある。臣下の婚約者を殺し、その臣下に殺されたのだろう?」
「そこまで分かっていてお聞きなさると」
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