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国王には、王妃と二人の貴妃の間に、三人の息子がいた。
第一王子ニズリーは第一の貴妃の息子、第二王子アダレンは王妃の息子である。
そして、姿が見えない第三王子が、第二の貴妃の息子であった。
「父上、あれのことです。またどこかで寝ているに違いありません。待つだけ無駄でございましょう」
「だがアダレン、あの子は出席すると、昨日言っていたぞ?」
ニズリーの、やんわりと否定する言葉に、アダレンは苛立った。
アダレンは弟たる第三王子が嫌いだった。
苦手ではなく、嫌いなのだ。嫌悪の対象と言ってもいい。
第三王子のふざけたもの言いや行動、何より父に気に入られているのが許せなかった。
次期国王を狙うアダレンにとって、第三王子は邪魔な存在でしかないのだ。
「父上、あいつは放っておきましょう。父上が立たねば他の者が祝いの言葉を言えません」
風習として、貴族間では自分より身分の高い者に話しかけるのは無礼とされる。
また、国王が座っている間は王家の者、あるいは直系貴族以外は国王に声をかけるのを許されていない。
国王に話しかけるのは身分を問わないが、座っている間は、祝いの言葉を述べたくとも言えないのだ。
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