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ナガン伯爵と、赤いドレスを着た女性は国王の前で膝をついた。
国王が立っていない間は話しかけることはできない。
それゆえ二人はその状態でじっ、と待った。
それを見ていた国王は、溜め息をついた。
「――婚約の申込みなら、令嬢の親族に言えばよい」
話しかけられたナガン伯爵は顔を上げた。
「婚約など、できません。それに、例え申込みであったとしても、陛下の前に参上するのは間違っておりません」
「何?」
伯爵の言葉に声を出したのはアダレンだ。
父王と同じく眉を寄せている。
「伯爵――我々に妹はいないよ」
「もちろん、存じております――」
真面目に言ったとたん、赤いドレスの女がぶふっ、と吹き出して、肩を揺らし始めた。
――――笑っている。
「………………」
エルゼウスは閉口して目を閉じた。
アダレンが怒る。
「ナガン伯爵!!この、無礼な女はなんのつもりか!!」
「それは…本人に聞いてもらうのが一番かと…」
全員の視線が女に向かう。
女はそれに気付き、呼吸を整えてから立ち上がった。
「まだ分かりませんか?」
淡い金髪が揺れた。
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