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「中央はもう駄目だな。完璧に機械まみれ」
「そだねー。機械と血まみれ」
「ちょっとは怖がったりって……リンはないのか?」
のんびりと答える少女を黒髪の青年は呆れ混じりに振り返る。
少女の漆黒の長髪は滑らかな白い肌によく映え、黒い大きな瞳が青年を見ていた。彼女の纏う純白のワンピースは所々血で汚れている。
壊れ、血の飛び散ったすべり台の残骸に腰掛けたまま、へらへらとリンは笑っていた。
「なに言ってるの! 私お魚さばけるんだからね? 全部魚の血って思えばへーきへーき」
「図太いねぇおまえってやつは」
「タクトだって平気で踏んづけてくじゃない? 危ないお仕事してたかいあるよねー」
偉い偉いと、まるで子供にするかのようにリンはタクトの頭を撫でる。
煩わしいかと思えば意外にタクトはそのままだ。切れ長の黒い瞳を細め、少女を眺めていた。
しかし和やかな雰囲気の二人の表情がいきなり引き締まる。
ガシャガシャと人には出せない音で何かが歩いてくるのだ。
マザーの手足として人を殺して回っている機械兵。普通に見つかれば、その先はみえている。
「一体か、潰した方が……」
音もなくタクトは立ち上がり、一点を見つめた。
そして機械兵目掛けて走りだそうとしたその時、
「危ないことはあえてしないのっ!」
と叫んだリンに足を掴まれバランスを崩す。
「ッ! この馬鹿」
「正論よっ! それに見つかっても大丈夫な方法あるじゃない」
「俺はそれでもいいけどリンがよくないだろッ!?」
「女性蔑視しないでよっ」
言い争いなどこの場でするべきではないだろうに。
とにもかくにも、二人の喧騒が呼んだのは厄介ごとでしかないようだった。
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