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「あっ……!」
「声出すな馬鹿ッ! いいか? 絶対に喋るな動くな、わかったな」
慌ててタクトはリンの口に手を当て塞ぎ、その場に膝をつける。
横でリンが息を飲むのが聞こえた。目立たない喉仏が上下し、緊張を示す。
ガシャン、ガシャンと足音響かせ迫り来る機械。感情無きただの機械。
フォルムが人型だけあり言いようのない不気味さを漂わせている。
顔のど真ん中にある視覚の役割を持った、赤く輝く機械の球体パーツ。ギョロリと音がしそうな生々しい動きに、リンは思わずタクトの手を掴んだ。
安心させるようにタクトも握り返す。
眼前に迫る機械兵、速まる動悸。しかしそれでも彼らは動かない。同様に機械兵も彼らが見えていないかのように、大きな動きはみせていない。
しばらくして機械兵は背を向け遠ざかっていく。
安堵のため息を二人が漏らしかけた時、機械兵が唐突に振り向いた。
血のような機械の目が二人を見て、走ってくる。大地を抉り、無機質な手足を振りかざし目的を遂行するためだけに。
「ッ!」
動きかけるリンにタクトは力を込めて制止する。
『信じて、リン』
恐怖で染まるリンの目に、タクトの自信溢れる顔が映る。
口パクの言葉にリンは小さく頷いた。
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