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機械兵は不気味な音をたてて走り、走り、走り来る。
無情に非情に無機質に。
息をのむリンのすぐ真横を機械兵は走りすぎた。
「うわぁあああッ!」
刹那に響く、悲鳴。
この時初めてリンは近くに人がいたのだと知った。
タクトを見ればわかりきっていたのか表情に変化はない。いや、変化はわずかにあった。
酷く冷たい瞳が彼を彩る。
「来るなッ来るなあぁあああッ!」
声帯を張り裂けんばかりに震わせる悲鳴。命の限りの叫びにリンは耳を塞ぎたい衝動に駆られるが、手を動かすことすらできなかった。
微塵も動かない二人の目の前に男が躍り出る。
どうみても二人よりだいぶ年上だろう。
その男は二人を見て目を見開いていた。
「なんでだよッ!? なんでおまえらいるのに俺がッ……ぁが!」
叫ぶ男の首に食い込む手。
機械の無機質な手。
人より遥かな力を誇る、殺人機械の血染めの。
リンの目の前で男の顔色が変わっていく。赤黒く染まりつつも、必死で喉のあたりを掻き毟る。
獣の呻きに似た叫びを吐きつつ男は暴れ狂った。
しかし機械はただ命令を遂行するだけ。
ギリギリと機械は喉を締めつけ、ついには断ち切る。
ぐじゅっという嫌な音。
皮膚を破り、血管を引き裂き、気道を押し潰されれば呼気が無惨に漏れた。
「あ゛ぁああぁ゛ッ」
響く断末魔。
迸る、赤い赤い真っ赤な鮮血。
リンの視界は、一面の赤に染まる。
少女の瞳から知らずに一筋の涙が溢れだしていた。
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