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ボタボタと溢れ出すのは涙と血液。
どちらも命の雫そのものを、ただただ流して地を濡らした。
リンの涙の何倍も血を流す男は引きずられていく。
ズッ、ズッとゆっくり引きずられていく。
ちぎれかけている首が頼りなくゆらゆらと揺れていた。
うねる血の道標を残してその姿は遠くなっていくが、途中で血は途切れる。
「リン」
「お魚に思えないよね……こんなの……」
裂かれた生皮は表皮の肌色に比べ、裏は鮮血に染まり血管の脈動がわずかにうかがえたほど。
巡る血管はブチブチと引きちぎられ、その音は想像以上に水気を含んでいた気さえする。
顔に付着した血を手で拭い、赤で掠れたその手を見つめる。
乾いた血は茶色味がかっていた。
涙は止まらず流れているのにリンは淡々としているものだ。タクトはその肩を軽く叩いた。
が、しかし。
「仕方ないから鶏さんって思うことにするね。少しは近いし」
「……心配して損したな。おい」
にへらっとリンは表情を崩し、眉をハの字に寄せて立ち上がる。
「にしても凄いね! 本当に見つからなかった」
タクトの腕を引っ張り上げ、憮然とする顔を覗き込んだ。
「まぁそういうもんだからな。これ」
言って彼が取り出したのは手のひら大のなにやら精密そうな機械であった。
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