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『リン……どこ……?』
瓦礫と化した街をさまよい歩く、影が一つ。
『マザーが待ってるのに……リンを待ってるのに……』
ブツブツと呟きながら焦点を失った瞳をあたりに向けて、ひたすら足を進めていた。
一歩進むごとに血溜まりを踏みつけ、赤い足跡を残していく。
『ダメだよぉ逃げちゃ……』
照らす者を失った街灯がチカチカと瞬いて奇怪な影を映し出す様は、まさにこの世の終わりにふさわしい光景だ。
『あーもう……ずぅっと探してたらお腹すいちゃったなぁ』
はぁ、と吐息を吐き出し少女はぺたんと座り込む。
壊れかけの街灯に照らされた顔は、まだあどけない少女の面影を残し、砂糖菓子のようなと形容できる。
ただ似つかわしくないのは、その顔や身体にこびりついた赤茶のしみ。
少女の血濡れた銀の髪が光に煌めいていた。
きょろきょろとあたりを見回して、ひたりと一点を見つめる。
ニヤリと裂けたように歪む口元。
真っ赤な舌が唇をぺろりと舐めた。
『ごはん、みぃつけた』
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