1人が本棚に入れています
本棚に追加
「何考えてるの?」
いつの間にか考え事をして俯いていた僕の肩越しから、ちらっと見上げた先に雪生子の顔があった。
僕はどうしようもなく照れ臭くなって、それ以上顔を上げる事が出来なくなった。
その態度に業を煮やしたのか、雪生子はその全体重を掛けて、僕の背中に覆い被さってきた。
こうやってくっ付いていると暖かい。
「北海道はもう雪降ってるんだって」
耳元に雪生子の息が掛かる。
僕は少し顔を上げ、一言『そうなんだ……』と答えた。
雪生子は空を見上げていた。
僕もそれに合わせて顔を上げる。
空には先ほどの虫と同じ格好をした小さな虫が、まるで雪の様に何匹も何匹もふわふわと空中を漂っていた。
最初のコメントを投稿しよう!