1人が本棚に入れています
本棚に追加
「東京にも今年は雪降るのかな……」
雪生子がポツリと言った一言が、何だか物悲しそうで、遠くを見つめたままのその視線の先を、僕も不思議な気持ちで眺めていた。
不意にその中の一匹が再び舞い降りてきて雪生子の掌の上にちょこんと止まった。
僕も雪生子と一緒になってその掌を覗き込んだ。
盛んに翅をパタパタと動かしながら、まるで遠い目的地までの疲れを、ほんのひと時ここで休んでいるかのように見えて、滑稽だが不思議と可愛いい。
僕らはその仕草を見ながら、いつしか2人で笑っていた。
ふと見上げた視線が雪生子の視線とぶつかる。
僕らは出会った頃にタイムスリップしていた。
直後に2人して吹き出す。
こんなに笑ったのは何年ぶりだろう。
僕は急に愛しくなって、ここが公園の中である事も忘れ、雪生子を強く抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!