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舞台は通い慣れた学校の教室。
数メートル離れ、僕は彼と対峙していた。
「……『まさか』とでも言いたげだな」
彼は氷川旭。僕の無二の親友だ。が、かつての面影はもうない。
「貴様は私の御敵であり、宿敵であり、仇敵である。だがしかし、貴様との友の情が虚であった訳ではない」
氷川の正体は魔王だ。その野望は世界の征服、ひいては天界への侵攻、というものだった。
しかし、始めからそんな野望を抱いていた訳ではない。
「貴様を亡き者にするのはあまりに惜しい。友よ、我が友よ」
僕が生まれながらに勇者であったように、彼もまた生まれながらに魔王としての資質を持っていた。
それが覚醒し、真の魔王と成り果ててしまったのだ。
「私と共に覇道を歩むのだ。我らの力が揃えば天界とて恐るるに足らぬ」
もはや、今の氷川は僕の知る氷川旭ではない。悪魔の王なのだ。
魔王は既に世界を脅かし、今まさに手に入れんとしている。
「全ての者は我らに頭を垂れ、あらゆる物は我らの物となる」
世界中に彼の魔の手がさしかった今、それを止められるのは僕しかいない。
「これが最後の問いだ。私と共に征くか、勇者として死ぬか。どちらを選ぶ、藍原京也――」
その問いに、僕は――
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