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「……もう良いや。美砂、帰ろうか……その前に」
がたんっと机を持ち上げて後ろにいく。
女の子の机があれじゃあんまりでしょ。
佐奈の机を自分の物とかえて美砂の手を握る。
「大樹、何、してるの?」
美砂が二つの机を見る。
「見てるだけで胸糞悪いんだよ。ほら、頭痛いんだろ」
――あのっ!
「……ん?」
――ありがとう。
「はい。んじゃね」
手をひらひらと振ってから、怒鳴る教師とクラスメートの冷たい視線を振り払って美砂の手をしっかり握った。
二人乗りの自転車が山道に差し掛かった時、美砂が意を決したように呟いた。
「………大樹。だめよ」
「何が?」
「彼女はだめよ。違うもの」
「意味分かんねーこと言うなよ。美砂はそんなやつじゃ無いだろ。似合わないからやめろって」
背中の美砂の空気が凍ったのが手に取るように分かった。
だけど頭は佐奈で一杯になっていた。
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