117人が本棚に入れています
本棚に追加
――ねぇ大樹君。
「……ん?」
――もっかい佐奈に触ってくんないかなぁ?
「……え?」
目が泳ぐ。
鼓動が加速して少し冷や汗が滲む。
――やっぱ嫌?
「そんなこと無い!……けど」
――けど?
「怖いよ……」
頭の前に腕を出して隠れるように縮こまる。
君が死んでるなんて確認することが怖いんだ。
――……ありがとう。
佐奈は笑ったせいで零れた涙をそのままにして僕をただ見つめた。
その光る涙に吸い寄せられるようにゆっくり手を伸ばした。
でもやっぱり震えていて鼓動は強く早かった。
「……っ」
僕の指では佐奈の涙は拭えなかった。
僕は佐奈に触れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!