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夕食の支度をする美砂の足はひょこひょことひきずられて痛々しい。
「やっぱり俺が作るよ」
隣に立って包丁をとろうとすると思いっきり睨まれた。
「大樹の指入りなんて嫌よ」
……ごもっとも。
美砂は家事で俺は二人分の宿題。
いつからか決まった二人のルール。
それに甘んじてきたせいで俺は家事を何一つできない。
「……ねぇ大樹」
「ん?」
「彼女、作らないでね」
「分かってるよ。約束は守るから、泣くなって」
目隠しするように抱きしめてゆっくり頭を撫でた。
『お互い以上に大切な人をつくらない』
僕らの雨の日に交わした大事な約束。
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