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すぐにわかった。
こんな晴れた日に
黄色い傘と
水玉の傘。
『ひさしぶりって感じだね』
やっちゃんが言う。
『だよなぁ…。初めて会うのに懐かしい気がする』
これが最初の会話。
その日は
1日中
遊園地で遊んだ。
片っ端から
乗り物に乗った。
やっちゃんは
ジェットコースターが得意で
苦手な俺は
ギャーギャー騒いでしまった。
バイキングが苦手なやっちゃんは
吐きそうだとグッタリしてた。
俺は意外に平気なんだけど。
やっちゃんの前では
何もかっこつけなくてよかった。
それは多分
やっちゃんも同じ。
男と女なのに
ずっと昔からの
ツレ同士みたいだ。
いろんな話もした。
笑った。
笑った。
楽しくて
気楽で
いい休みを過ごせた気がした。
あんまり楽しかったから、時間がたつのが早かった。
俺は
今日の記念になるような物が欲しくなった。
お店を回っていたら
可愛いガラスの靴のピアスを見つけた。
やっちゃんは
ピアスをしている。
俺は
やっちゃんが気づかないようにガラスのピアスを買った。
コーヒーショップで
『これ…つけてみてよ』
小さな袋を渡した。
『うわぁ可愛いぃっ♪いつの間に買ったの?』
『さっきね』
『似合う?』
『似合うよ』
それからまたしばらく遊んだ。
帰りの時間になった。
『シンデレラは帰らなきゃ…』
『ちょっと待って…』
俺は
やっちゃんの耳から
片方のピアスをはずした。
『え…?』
『シンデレラは片方のガラスの靴を落として行くもんだし、王子様はそれを目印にシンデレラを探すもんだよ』
やっちゃんと目が合った。
ぷっ!!!
誰がシンデレラと王子様なんやぁ!!!
ひとしきり笑い転げた後
『じゃあ目印に持っててね』
『目印だね』
そう言ってやっちゃんは帰って行った。
メアドの交換?
いらないでしょ。
このガラスの靴があればね。
女友達が言ってた。
男女でもいい友達になれるってわかる気がした。
でもちょっとだけ
サプライズのガラスの靴。
これはこれで
いいでしょ。
俺は一人で
納得した。
またいつかがあるとは限らないけど
ないとも限らない…。
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