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そこは不思議な空間だった。
床は無く、壁も無く、ただ一つ椅子があり、その周囲を輝く何かが浮かんでいた。
「相も変わらず、ここにいたんだね。」
声が響く。
しかしそこには誰もいない。
ただ声が響く。
「悠久の時間、その暇潰しが、こんな馬鹿げたパズルだなんてくだらないね。」
返事は無い。
ただ空間に響くのは、一人の少女の声だった。
それは無垢な声。
それは道化の声。
そしてそれは、深い闇。
「これで何度目の実験になるのかな?今度こそ貴方が望む正解が見つかるといいね?」
周囲を輝く何か、それが次第に形を作る。
パズルのピース、それが輝く何かの正体だった。
そこに描かれていたのは、銀髪の少女だった。
「シアディルフィア、始まりの鍵となる少女か。そして終わりの鍵となる。」
そして他のピースに注目する。そこにあるのは一人の少年。
「高村彼方、全ての可能性に至る少年故に全てに縛られる。」
相変わらず、姿は無い。
しかし声の主が笑っている気配は伝わってくる。
「貴方はどう思う?結局彼は、何を選ぶと思う?」
最後まで、もう一人が答える事はなかった。
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