8月7日(木)【紗耶】

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    菜穂子 「雅樹ぃ…」   雅樹 「菜穂子! 俺、行ってくる!」   菜穂子 「はい。行ってらっしゃい」   雅樹 「おう!」   菜穂子 「……………ふふっ。 ほんと…ゆうくんに似てきたよ」   ………。   ……。   …。   雅樹 「ふぅ……」   まぁ…紗耶がいるところはだいたい予想がつく。   紗耶のお気に入りの場所を探せばいいんだ。   そしてなおかつ、歩いて行ける距離。   となると、うかぶのは一つ。   雅樹 「………ぉ」   ほら……いた。   大きな桜の木がある公園。   今は花も散ってしまって、ただの大きい木だけれど……。   紗耶 「………」   その小さな公園の小さなブランコに、ポツンと座る小柄な女の子。   ブランコで大技を決めるわけでもなく、こぐわけでもなく…ただ座ってボーっとしてるだけ。   周りから見れば、凄くつまらないことなのだけれど、紗耶にとってそれは凄く楽しいことらしい……。   雅樹 「さーやっ」   紗耶 「…ぁ……雅樹」   雅樹 「なにしてるんだ?」   紗耶 「ブランコ」   雅樹 「ブランコは椅子じゃねーぞ」   紗耶 「ん」   雅樹 「………たく」   わかってるのかねぇ…。   雅樹 「よし、お説教だ」   隣のブランコに座る。   紗耶 「んっ」   そうすると、紗耶は俺の膝の上に座り、寄りかかってくる。   雅樹 「うし!」   これが、自然と身についた俺と紗耶のお説教の体制。   全然お説教にはならないけど、紗耶には頭ごなしに叱るよりこっちのほうが効果がある。   紗耶 「………」   雅樹 「補習はどうしたんだ?」   紗耶 「サボった」   雅樹 「どうして? みんな頑張ってるだろ?」   紗耶 「だってつまんないんだもん」   雅樹 「そりゃーみんな同じだ」   紗耶 「だったらみんな紗耶みたいにサボればいい」   雅樹 「そういうわけにはいかないんだよなぁ…」   嫌ならやめればいいなんて、世の中そんなに甘くはない。   紗耶 「………」   雅樹 「卒業できなくなっちゃうぞ」   紗耶 「………」   雅樹 「弥生と鈴音と紺…みんなに、 毎日会えなくなるんだぞ?」   紗耶 「………や…」   雅樹 「だったら頑張らなきゃ」   紗耶 「………」   飴と鞭を使い分けるのってけっこう難しい。   雅樹 「じゃあこうするか。 紗耶がちゃんと補習にでたら、 一緒に遊び行こう」   紗耶 「っほんと?」    
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