‡若菜-wakana-‡

2/3
前へ
/8ページ
次へ
「───あなたっ」 若かりし頃──…。 よく怪我をして妻に怒られたものだった…。 ポタポタと左手首から雫が落ちる。 「また怪我をして…… 怪我をしたら私に云って下さいとあれほど申したのにっ…」 もう…と眉間に皺を寄せ、それでも優しく手当てする彼女を、私がどれだけ愛して止まないか、知るよしもなかっただろう。 …ずっと… 年老いるまで続くと思っていた… もっと──… もっと一緒にいられると思っていた…。 横たわる彼女の顔は、寝ているかのように安らかであった……。 また『危なっかしい人なんだから…』と、微笑みながら私を見てくれるようで…。 .
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加