14人が本棚に入れています
本棚に追加
「───あなたっ」
若かりし頃──…。
よく怪我をして妻に怒られたものだった…。
ポタポタと左手首から雫が落ちる。
「また怪我をして……
怪我をしたら私に云って下さいとあれほど申したのにっ…」
もう…と眉間に皺を寄せ、それでも優しく手当てする彼女を、私がどれだけ愛して止まないか、知るよしもなかっただろう。
…ずっと…
年老いるまで続くと思っていた…
もっと──…
もっと一緒にいられると思っていた…。
横たわる彼女の顔は、寝ているかのように安らかであった……。
また『危なっかしい人なんだから…』と、微笑みながら私を見てくれるようで…。
.
最初のコメントを投稿しよう!