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「はい。少しだけお邪魔しますね」
玄関に入ってきたバリューは脱いだ靴を丁寧に揃えてリビングへあがった。
「何かご注文を承りましょうか?」
「いや、いい。さっき買物に行ってきたから間に合ってる」
バリューはこの外界から隔離された暗黒街で商売をしている、所謂闇の商売人だ。
商売といってもその品は食品や日用品だけでなく、銃や麻薬など、表には流通できないようなものまで取り扱っている。
だが、なんといってもこいつの商品は高い。
普通の市場で買物ができない虚人達の足元を見ていて、ここぞとばかりに法外な値段を提示してくる。
一見、どこにでもいる気の弱そうな男だがかなり腹黒い。
できるだけ関わりたくない男だが、高いだけあって品物の質は最高級だしアスカはよく銃弾を購入している。それに注文品の仕入れも早く仕事の腕は確かだ。
ただやっぱりプライベートではあまり一緒にいたくない。
場をもたせようと煎れたお茶をテーブルに乗せると同時に玄関のドアが無遠慮に開かれた。
「あらルク、あたしがいない間に不倫?」
アスカが帰ってきた。水色のハイヒールを脱ぎ散らかし、仕事の時にいつも着ていく水色のジャケットをソファの上に放り投げ、自らもソファに背中から倒れこんだ。
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