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「何言ってる。アスカが何かバリューに注文したんだろ」
「いえ、私は何も頼まれていませんよ」
アスカに頼まれていたんじゃないのか。だったらアスカへの用事はなんなのだろう。
「あたしに何か用事?」
「特に何も。ただルクさんじゃ注文を頼んでくれそうにないので」
……それだけの為に家にあがりこんできたのか。
結局家に入れたのは僕なのだから文句は言えないが……いい性格をしている。目の前の男から目を逸らし溜息をついた。
「悪いけど注文はないからさっさと帰ってくれない? 疲れてるの」
「今日はどちらまでいらっしゃってたのですか?」
「あんたには関係ないでしょ」
アスカもやはりこの男があまり好きではないようだ。まあアスカのこの乱暴な態度はほとんどの人間に対してだが。
対するバリューも生活がかかっているのだからかなりしぶとく家に居座る。そして最後はたいていキレたアスカがバリューをドアの外まで引きずって追い出す。
しばらく二人が言い合っているとどこからか携帯の着信が鳴った。二人も気がついたようで喋るのを中断し、アスカはジャケットのポケットに手をいれまさぐった。
「ほら、仕事の依頼のメールよ。あんたは邪魔だから帰って」
手をバリューに向けて追い払う仕草をしながら片手で携帯を開き、メールを読みはじめた。
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