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「浩……也?」
ゆっくりライトを目の前の人物の足元から上へ移動させる。上半身が全て照らされると、それが誰なのかはっきり認識できた。
「ルク……」
「浩也、どうしたんだ、その血」
ライトの明かりに照らされた浩也の上半身はべっとりと全面に真っ赤な血が張り付いていた。
「大丈夫か?」
駆け足で浩也に近づくと、まだ新しい血の臭いが鼻から脳まで通っていった。
近くで彼を調べても、これほど血が出るような傷は負っていないようだ。
明かりを足元に移動させて、それに合わせ視線をずらしていくと先端が血でぬらぬらと染まっている鉄パイプが落ちていた。さっきの金属音はこれか。
さらに視線を奥まで動かすと予想通り、もうすっかり見慣れてしまった死体のお出ましだ。
この死体は顔面は、おそらくさっきの鉄パイプで殴られて潰されているが、髪型や体格から判断するに女性だろう。そして露出の多い、濃いピンク色のワンピースはいかにも娼婦だったことを表しているようだった。
だが女が死んでいることは(もう僕にとっては)問題でなく、女の死体がここにあることが問題だった。
「浩也。これはお前が……?」
女の死体のすぐそばに反り血を半身に浴びた浩也と、凶器の鉄パイプがあればどう考えても【浩也がこの女を殺した】ことになる。
浩也は下を向いたまま口を開いた。
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