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「でもこの研究所、随分遠いよ。車とかがあるならまだしも……」
もろもろの準備を整え、軽く昼食を取ったあと、僕達は暗黒街から一番近いいつもの街の人通りのないはずれにいた。
あの後、メモを再確認したが研究所はここからだいぶ離れていて、歩いて行くならもう時間には間に合わないだろう。
それなのにアスカはさっき一瞬時間を確認しただけであとは余裕ぶった顔をしている。
「大丈夫だって。……ほらきた」
アスカが指差す方を見ると、一台のボックスカーがこちらに向かって走ってきた。
一瞬アスカを隠そうと思ったが、エンジン音が大きくなるにつれて運転手の顔が明確になるにつれて隠れる必要はないと理解した。
「お待たせしました、お二人とも」
運転席の窓を開けて会釈してきたのはバリューだった。
「昨日ルクがぼーっとしてる間にあたしが頼んだの」
相変わらずこの女は僕の気づかないところで勝手に進めている。
だが今回ばかりは完全に僕に非があるのだから溜息をつくだけに留めた。
「それじゃよろしく」
「往復の運賃の方が先ですよ」
後部席に乗り込もうとしたアスカがドアに手をかける前にバリューはロックをかけやがった。さすがにあからさま過ぎるだろう。
「わかってるって。はい」
そう言ってアスカが手渡したのは白い粉が入ったビニール袋。この前の仕事のついでに盗んだ覚醒剤か。
「毎度ありがとうございます。それじゃ、すぐ出発してよろしいですか?」
アスカが短く答えて今度こそ後部席のドアを開けてシートに座った。僕もそれに続いて車に乗りこんだ。
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