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自分と似ている、なんて言われても訳がわからないだろう。少年は不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「それより……名前、君の名前は?」
僕の発言のせいだが、なんだか気まずい空気になってしまったので質問を振ってみた。
少年は少し俯いて、小さな声で答えた。
「……4号」
「4号?」
まさか名前がないのだろうか。少年は自分を番号で呼んだ。
「俺は研究所で実験体だった……」
研究所から逃げ出してきたのか。それならこの上も下も白い、味のない服装も頷ける。
あらためて少年を見ると身長は僕よりも頭半個分高いがかなり痩せていてあまり食事をとっていないように見える。顔立ちから察するに年齢も僕とそう離れていないだろう。
「名前……お前の……」
ぼーっと少年を観察しているといきなり質問を返されて、急に意識が鮮明に戻った。
「僕? 僕はルクっていうんだ」
「ルク……」
「そう、ルク」
随分と会話をしてないのか少年の言葉はたどたどしい。
それに少年はまだ肩で息をしている。僕が山道に慣れて体力があるせいもあるが。きっと満足に食事をしていないから力が出ないのだろう。
「お腹すいてるだろ? 食べなよ」
そういってビニール袋から、先程買ったパンの袋を開け少年に差し出すと、彼は素早くそれを僕の手からかっさらい貪るように食べはじめた。やはり相当空腹だったようだ。
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