最終章

3/27
前へ
/185ページ
次へ
そんな優等生が眼前に発見したものは、 「…あれ?」 朝は滅多に出くわすことの無い姿だった。 「明?」 前を歩いていた人間に小走りで追いつき、声をかける。 振り返ったのはやっぱり明だった。 「あ、楓。おはよう。」 ニコリと小さく笑って挨拶する明の笑顔に、一瞬ウッと目がくらむ。 楓にとっては真夏の直射日光よりも眩しいものだった。 「おはよう、朝会うなんて珍しいな。今日はバスで行かないのか?」 心の中で、出くわした小さな幸せを噛み締めつつ尋ねる楓。 すると明は、その問いが突き刺さったような苦い顔をした。 「う、うん。ちょっとね。」 苦笑い。 何かに動揺しているが、それを隠してごまかそうとしている笑顔。 …が、顔と態度に出過ぎているのですぐわかる。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

760人が本棚に入れています
本棚に追加