第三章

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タクシーに乗って弘人の家に行く。だけど弘人がいない。 車もない。 こんな時間になんでいないの。 仕事は? 弘人の母親に聞く。 『最近、帰りが朝で昼前に出ていくの』 昼前? ひとり弘人の部屋で待つ。 弘人の部屋ってこんな匂いだったっけ? 具合が悪い。 テーブルに気になる組の名刺。 陵太の名前。陵太やくざになったの?何? ナンナノ? 頭が混乱する。 陵太とみきはもう別れていて、そのあと付き合った男とみきはデキ婚してしあわせになっていた。 もうなんでもいいから会いたい。早く話がしたい。 窓を開け、弘人のマフラーの音をさがす。 帰ってきたのはもう朝だった。 弘人はなんでいるのって顔でビックリしてた。 またぶっきらぼうに何したんだよ?って名刺をどかし、言う。 話をしたいけど、聞きたいこともあるけど、言葉が出てこない。何かが変わってきてる。怖くてしがみついた。 弘人は無言のまま優しく頭を撫でてくれる。 この感触は前と変わらない。 『男に言いたいことも言えないようじゃ、付き合ってるっていえねーよ!』 と豪語していたあたしはどこにいったのか? 弘人にはまっていた。 はまっているというより、この人をひとりにしないって思った。 今、弘人に何があったのかわからない。独りにしたくない。 甘えられない弘人は自分を強くするほか、淋しさを解消できない。 昔のあたしのように。 弘人のそばを離れない。
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