第三章

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それから、あたしは弘人と何度も話した。 何度も泣いた。 弘人の弱さが悔しくて悔しくて泣いた。 こんな父親でいいわけねーだろーが!!って怒鳴られた事もあった。 弘人は親からの愛情を知らない。 小さい頃から邪魔者扱いをされて、一匹狼だったからだ。 それにはもちろん理由があって、小学生の頃から非行の傾向があったからだと弘人の母から聞いていた。 弘人の母は弘人が何を好んで食べてるか何が嫌いかそれすら知らない。 弘人は生姜焼きと千切りキャベツとマヨネーズが大好きですよ。 茄子が嫌いだけど、麻婆茄子にすれば食べるよ。 いろんなことを教えてあげた。 どうして聞かないの? と聞いても、弘人の目が怖いって言ってた。親子なのに、子供が怖いなんて、おかしいよね。 だから、中学生の時や少年院に入った時も怒ったことはないと言う。 弘人の父親も母親も、男兄弟の次男坊を、非行に走っても構いはしなかった。 もっと怒ってあげたらよかったのに。 言うこと聞かないなら殴ってひきずってでも言うこと聞かせりゃよかったんだよ。 あたしは、毎日布団の上は泣き明かしたあとのティッシュの山だった。 母はそんなあたしを見て、本当に産ませていいものなのかと、辛かったと後から聞いた。 あたしは気付かれないようにしていたつもりだったのにやっぱりお見通しなんだな。 あたしは諦めなかった。 諦めるもんか。 今、あたしがしっかりしなきゃどうする。
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