第一章

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自主研修の前日、お互いに別れる という計画は実行された。 スムーズにいった。 泣いてる愛美のそばに健がいるのが見える。 フンって思った。 龍治とあたしは自主研修中楽しく過ごした。 ただ、それだけ。 地元に帰ってきて、すぐに愛美と健も付き合いはじめたと聞いてやっぱりそうなんじゃんって思った。 遅かれ早かれこうなるんじゃん。だったらこっちから別れを切り出したからって愛美が泣く必要なくない?付き合ったってことは結局は好きなのは健なんじゃん?それとも寂しいから?泣くのとか意味わかんない。いらいらする。 健とは話さなくなった。目も合わなくなった。悔しかった。結局そんなに好きじゃなかったんじゃん。泣きたくなった。 龍治といるとき、どこかでいつも健を意識してた。 当て付ける場所がなくなったら途端に龍治と居る意味がわからなくなりそうになった。それはきっと龍治も一緒。 だけどあたしは引きかえせない。これで心置きなく龍治と付き合えると思うしかない。 ここで別れるもんか。絶対別れない。 でも、別れはくる。 本気の恋に遊びの恋は勝てない。そんなのはよく知っていた。 すぐに愛美と健は別れていた。 愛美は龍治がやっぱり好きだから。 龍治も愛美が好きだった。 あたしも健が好きだった。 そんなのもうとっくにわかっていたけど、そりを認めたら、苦しくなることもわかっていたから、認めるわけにはいかなかった。 龍治と一緒にいても、健が後ろを通り過ぎると全神経が後ろにあった。 笑ってる龍治の表情より、後ろを通り過ぎる怒った健の表情が焼き付いた。 素直に好きだと健に言えたらいいのに。 だけど、こんなに酷いことをしてどの面下げてそんなこと言えばいい?無理だ。 龍治の気持ちも痛いくらいわかってるのに、あたしは別れ話をしなかった。 何よりも健に突き放されるのが怖い。
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