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あたしは子供の頃に子猫を助けようとしてトラックに突っ込んだ。体は奇跡的にも軽傷で済んだけど両目の視界と子猫の命は奪われてしまった。
子供の頃に色々専門的な話を聞かされたが、つまり手術が出来ないって事らしい。大人になれば出来る。そう信じてそれだけの望みを夢見て生きてきた。
なのに…
「手術は失敗です…本当に申し訳ありません…!」
包帯を解かれた筈の瞳は漆黒しか映さず医師に恐る恐る問い掛けたら絶望的な言葉が返って来た。
その瞬間、一寸の光さえも遮られて目の前は本当に真っ暗になった。
「…髪を真っ赤に染めろ…」
「は…?」
「髪を真っ赤に染めろって言ってんだろ!!」
赤。
あたしが大好きな色。ありとあらゆる物を赤色に染めていた。筆箱に鉛筆。ネイルにヘアピン。服も赤だった。
…それは子供の頃の話。
失明手前までは赤よりも落ち着いた色が好きになっていった。黒や青という色が。
でも今は違う。赤じゃないと落ち着かない。
あたしの名前はアカネ。
唯一、あたしがあたしだと証明してくれる色。
赤じゃないと…あたしは暗闇に囚われる。
暗闇を血に染まった色で塗り潰す事でしか、あたしの存在を示せなかった…。
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