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病棟区の一室。ベッドに座り、ただただ虚ろな瞳で俯き続ける……華里奈。
胴体などに包帯を巻き、いち患者としてここにいる。
同室にはたった今見舞いに来た明彦。
「……まずは言わせてください。生きて帰ってくれて安心しました、華里奈さん」
明彦は側にあったイスに腰を降ろし、言い放った。
「…………ああ」
華里奈は短く、素っ気なく返答。
「ちなみにレインスにはさっき会って来ました。手術も成功して、安静にしていれば回復するそうです」
「何よりだな」
仲間の無事を聞けることは励みになる。
だが……。
「椎羅木のことは僕も聞きました。華里奈さんのショックは大きいでしょうが、それは僕も……レインスや舞さん達も同じです。1人で思い詰めるのはやめませんか?」
……いくら言葉を発しても華里奈からの返答は短い相槌ばかり。
魂の抜けた顔。
「…………僕ね、ドイツの時からずっと気になってたことがあるんですよ。椎羅木と僕のどっちが強いか……ってね。まあママに誓って負けるつもりはありませんが、奴と1度改めて模擬戦をしてみたいと思ってます。だからあいつには生きてもらわなくちゃ困る。僕が張り合える相手がいなくなりますから」
思いのままを語る明彦。
だが
「……生きていれば……な」
華里奈の返答は相変わらずだ。
いや……むしろ悲観的になりつつある。
「何故……そんなことが言えるんですか……!」
明彦は歯を食いしばり、握り拳を膝の上で震わせた。
「あなたは何故そんなことが言える……!椎羅木は死んだと決まった訳じゃない……!!」
すると華里奈は一呼吸。
静かにこう、呟いた。
「なら何故守は戻らない」
無表情を曇らせ
「私と守は約束した。また後で会おうと……約束した……!生きているなら私の元に来てくれる……!なのに……何故守は来ない……?なんで……!?」
沸き上がる絶望を
「……もう分かるだろう」
その瞳に
「守は……もう…………」
浮かべて。
その時だった。
明彦の脳内で何かが切れる。
そして立ち上がり、華里奈の胸倉を掴み
「そんな腑抜けた顔で椎羅木の名を口にするなッ!!」
怒号を、飛ばす。
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