奈落の底への失墜

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  休憩所 「負け戦ってのは……相変わらず虚しいもんだな」 古賀はベンチに腰を降ろし、言った。 「古賀君……」 その隣には本田。ニューヨークの残る4大ファミリーの残党駆除を遂行していたため、問題なく成功を納めて帰還した。 「今回の戦いの結果は聞いてるかい?アメリカ全土でのマフィエクとマフィアの勝敗は半々ってとこらしい。だがフィユールは健在、アメリカ本部は壊滅。トップがいるか否かってのは……デカい差だろうな」 と、古賀。 「こりゃあ残った支部が潰されんのも時間の問題だろうぜ」 続いて口を開いたのは長海。 本部が機能を失えば指揮系統が崩壊し支部は間違いなく壊滅に追いやられる。 「本部も本部で酷いものよ。奴らが引き上げた後、先に到着した私達が駆け付けたんだけど……誰1人として生存者はいなかった。……地獄絵図よ……」 誰1人として生存者はいないという本田の言葉が裏付ける意味。 それは長年親しい関係にあり、共に任務を遂行してきた坪内が……もうこの世にはいないことを意味している。 本田が自分の言葉に耐え切れず、顔を反らし、口に手を当てて嗚咽を必死に隠そうとしている。 古賀はその肩を……そっと抱き寄せた。 「フィユールで傷ついた戦闘員も全員ここに運ばれた訳じゃない。殆どが生死すら分からず行方不明扱い。奥まで突入してった奴らは確認しようがないしな」 と、古賀。 フィユールの制圧に失敗したということは、後に処理班が出向くことはできない。つまり……殆どの戦闘員の生死は調査できず、闇の中というわけだ。 行方不明扱いとなっているが、望みは薄い。 その行方不明者の中にはエリザや……守も……。 「……俺の仕事はここまでだ。勿論ギャラはいらねぇ」 すると立ち上がり、休憩所のドアを開ける長海。 「……俺の娘を……頼むぜ」 小さな背中を見せ……立ち去った。 「待って……長海君!」 即座に本田はその後を追おうとするが 「智子ちゃん」 古賀がその手を掴み、止めた。 「でも彼の息子が……!傭兵業に戻ってる場合じゃないでしょ!?」 「誰にだってやらなきゃならんことがある。あいつだって辛いんだよ。気持ち、汲んでやれ」 ……真。お前の娘さんは任せろ。何がなんでも死なせない。 だからお前はお前の仕事をしろ。 長海 真としての……仕事をよ。
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