奈落の底への失墜

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  「……では、絶対に安静にしていてくださいね」 1人の患者を診終え、病室から立ち退く舞。 生還した矢先、医者としての職務を真っ当中だ。 「巨乳!ここにいたか!」 その時、後方から声。 目をやるとそこにはリガードの姿。 リガードは、1度目のアメリカ本部襲撃前のエリザ脱走を助けるためにファミリーへ送り込まれた内通者として迎え入れられた。 敵側から寝返ったという事実は敗北を強いられたマフィエクの者に波風を立てる。リガードには信頼性もあるため素性を偽って保護するべきだとの判断だ。 無論、本当に敵意が消えているか否かの尋問はされたが問題なくパスできた。マフィアとしてのリガードの姿は既にない。 「舞ですってば。リガードさんもお疲れでしょう?骨折もしてますし、早く休んだ方が……」 「それはこちらのセリフだ。君こそ休養を取れ。ずっと働きっ放しじゃないか……!」 「できませんよ。まだ傷ついている人は沢山います」 確かに疲労は蓄積している。殺されるかもしれない場所を脱出した直後に戦闘員達の治療を休みなしに施し続ける。 「それは君もだろう!君はファミリーでもあれだけ頑張った!もう無理することはない!」 守がファミリー最下層にて行方不明となっている情報は舞もリガードも聞いている。 だがこの状況の行方不明とはどういう意味か……生存率は数える程もない。それを知った舞の精神的ダメージを考慮しての発言だ。 だが 「今無理しないで……いつ無理しろって言うんですか!!」 叫び倒す、舞。 リガードは少し驚き……たじろいだ。 「命からがら逃げ延びたのは皆同じです!!逃げ切れなかった人だっているのに今生きてる私が身を削らないでどうするんですか!!守だって怪我を隠したまま敵に立ち向かっていたのに……私が音を上げる訳にはいかないんです……!」 頬を伝う、雫。 弟の安否が常に脳裏にちらつく中で体に鞭打ち職務を果たす。 どれだけ辛いことか……。 「……すみません……っ……私……」 腕で涙を拭い、リガードの脇を足早に通過する舞。 その時 「手伝おう」 リガードが言い放った。 「え……でも……」 「腕は片方空いている。人手が足りないのなら1本付け足そう」 見ていられない。追い詰められた君を。 「確かに今は無理をする時だ。私も、付き添わせてもらうとするよ」
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