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「運転変わろうか?」
じゃあお願いしようかと夫。
私は運転席に乗り込んだ。
古くて大きな赤いエスティマ…
新婚旅行はこの車で、一週間かけて名古屋から九州まで走り、大冒険をした車。
それなりに乗り慣れているのに、なんだかこの日は運転がおかしかった。
実は、二日前は一日中長いお経の鳴り響く法事、前の日は夫の職場の関係者の結婚式の二次会に夜でて、余興のコーラ一気のみ大会で優勝(苦笑)
当日は、子育てに追われていた私には人前に姿を現すの久しぶりで、加えて朝早い出発に、かなり疲れ気味だった。
妙に右に寄ってしまう運転。
夫は人の運転に口出さないと言っていたが、この日はやけに私の運転に小言が多かった。
夫も疲れていたのだろう…
私は精神的疲労で限界だった。
「どこかのパーキングエリアで運転交替してほしい」
近くにハイウェイオアシスがあった。
「よかった、ここで交替しよう…」
ところが、入り口が分からず通りすぎてしまった。
この時、運転を交替できていたらこの話はこれでおしまいだったのに…
私は話を続けなければいけない。
「通りすぎてしまったから厚木インター降りたら、替わってね」
車はハイウェイを走る。
厚木インターが見えてきた…
やっと交替できる。
ところが減速が不充分で、夫の『ここのカーブは急だから…』の言葉が聞こえたと同時に、車はガードレールを突き破って転げ落ちていった。
回転しているフロントガラスにひびが沢山入っていく…それが一瞬ガラスのウサギが沢山跳ねているように見えた。
車は止まった。
私には意識があった。
夫は気を失っていたようだ。
ヤバイ、ガソリンが出ていたら引火の恐れがある!早く車からでなければ…
外に出ようとした時、足が全く動かなかった。
『もしかしたら、脊髄やられたのかも…』
奇しくも私は、国家資格である衛生管理士第一種の試験勉強中で、脊髄損傷の事を少し知っていた。
目が覚めた夫が、私を車体から引きずり降ろそうとしていた。
「ダメ、私足が動かないから脊髄やられてるかもしれない…触らないで!」
しかし夫は私の話を聞かない。
遠くで車を止め、『旦那さん、奥さん動かさないほうがいいよ!』と叫んでくれた男性がいた。
夫は、私の体から手を離した…
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