1467人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
約一週間、私はこの救命室で過ごした。
頭がかゆい…
指はおろか、腕も全く動かない。
ナースを呼んで掻いてもらう有様。
食事はエードヘルパーと呼ばれるスタッフが食べさせてくれた。
前掛けをかけ、ボロボロ食事をこぼしながら食べる。情けないが、こんな方法しか食べれないのだ。
この前まで、一歳の息子に離乳食を与えていた…
いまの私は、まさに全く逆の状態である。
ある日の食事にバナナがでた。
看病に長野から来た母が、『バナナ剥いてごらんよ』
どうしても指に力が入らない。
「お母さん、無理だよ」
母はバナナの頭を少し剥いてまた私に渡した。
『これなら剥けるでしょ?』
バナナとにらめっこ…
やはり指に力が入らず少しも剥けない。
虚しいばかりの気持ち。
母は、私の状況がまだ受け入れることができないのかもしれない。
今は剥けるようになったバナナをみるたびに、私はこの時の出来事をいつも思い出す。![image=46242894.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/46242894.jpg?width=800&format=jpg)
![image=46242894.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/46242894.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!