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意気込んで城を出たが、ターゲットの正確な位置がわからなかったため、なかなか見つからなかったが、“フキ山”というところにいることを突き止め、そこに向かった。
小高い丘の上に赤い屋根が特徴的な小さな家があった。
近くには可愛らしく飾られた小さな菜園があり、そこには発達途中の野菜が栽培されていた。
そこにはシンプルな白いエプロンをしたターゲットの女性がいた。
どうやら洗濯物を干しているらしく、タオルをバタバタと振って水を切っている。
…よし。
アニスは背中にある、双剣を一つ抜き一気に走り出した。
その時、家の扉が勢い良く開き、中から七、八歳の黄色いワンピースをきた少女が出てきて、女に抱きついた。
アニスは急いで速度を殺し、息を潜め、双剣をしまう。
気配を消すのはとても得意だった。
しかし、子供の勘と云うものはこういう時は神業並みに鋭い。
「ねぇ、ママ。あのお兄ちゃん誰?」
少女はこちらを指差す。
「…っ!」
アニスは動揺していた。
初めての任務に失敗しそうだからだ。
「…?」
女はこちらをじっと見て、おそるおそる言った。
「あなたは…アニス様?」
「…!?」
なぜ…俺の名を?…こいつ、誰なんだ?
「覚えていませんか?私です、キングダムで親衛隊の隊長をしていたケイです!」
ケイ…?記憶の断片から何となく浮かんでくる。
はっきりとでないが、ケイという女性が父と言い争っている様子が浮かんできた。
「…うっ!」
思い出そうとした時、鋭い頭痛が襲ってきた。
まるでなにかが記憶をロックしているかのようだ。
「アニス様!?どうなさりました!アニス様!!」
ケイが呼びかけているが、聞いている余裕はない。
「ぐっ!うわあああ!」
ふっとアニスから意識が消えた。
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