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「…?」
アニスはツギハギだらけの毛布がかけられたベットの中で目が覚めた。
トントンと、包丁が何かを叩く音がする。
とてもおいしそうなにおいがする。
ゆっくりと起き上がるとあの鋭い頭痛は消えていた。
「アニス様!気がつきましたか?」
切りかけた野菜をほったらかして、こちらに寄ってきた。
「ああ、もう平気だ。それにしてもケイ。久しぶりだな」
アニスがこのベッドで目が覚めて悟った事、それは自らの記憶が戻っていることだった。
私はアニス、五年前崩壊したキングダムの王子だ。父は先の襲撃で死亡、母も同様だ。
そして俺はある男の手引きで城を脱したが、その先で意識を失い気がついたときには記憶を失っていた。
「はい、本当に!よく…よく生きていてくださいました」
ケイの目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「お前もだ、ケイ。俺を逃がすために最後まで城に残ってくれていた。お前こそよく生きていた。…ところであの子は?お前の子か?」
「はい、あの子の名前はロナ。キングダム崩壊後にできた子でとても珍しい能力を持っています」
「アビリティか?」
ケイは頷く。
“能力(アビリティ)”というのは自然の力を自分の体に置換し、武器とする力のことで、それは炎であったり、雷、風など様々だ。
この世界の人間は一部の人間がこの力を使うことができる。
「それはどんな…、…?」
その時、破裂音とともに家が大きく揺れた。
「なんだ!?」
「わかりません、何かが炸裂したような…?」
アニスはベッドから飛び降り、双剣を腰にセットする。
この破裂音にアニスは聞き覚えがあった。
「ケイ!子供と一緒にここにいろ!絶対に来るなよ!!」
ケイが頷いたのを確認すると、ドアから勢いよく飛び出した。
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