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その時、小さな家のドアが開き、ケイが出てきた。
手に両刃の剣を持っている。
「ネロ!今の話は、本当か?」
家の中で聞いていたのだろうか、ネロを問い詰める。
この口調、キングダムにいた頃のままだ。
アニスは若干、懐かしく思った。
「もちろん。偽りは…ない」
その答えが返ってきた瞬間、ケイは剣を構え走った。
明らかに普通の主婦の動きではない、かつて王の護衛だった頃の俊敏な動きにアニスは驚いたが次の瞬間、さらに驚いた。
「…えっ?」
先ほどまで目の前を走っていたはずのケイの体が宙へと跳ねていた。
宙に浮くケイの体は小さな弧を描き、地面へとたたきつけられた。
「がはっ」
衝撃で肺に残っていた空気が押し出される。
「ケイ!」
アニスは何も考えず、ケイの元へと駆け寄り、抱きかかえた。
「おい!ケイ、しっかりしろ!」
見るとエプロンの腹のところに人の手形のような火傷があった。
口元から血をたらすケイは弱々しく言った。
「アニ…ス様、気をつけて…ネロは何か“能力(アビリティ)”を…持っています…」
それだけ言うと、ケイの体から力が抜けた。
「ケイ!」
まだ息がある…、気絶しただけか。
「ケイは死んだのか?口封じする手間が省けたぜ」
アニスはケイをやさしく寝かせ、ゆっくりと立ち上がった。
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