一章~薄月夜の邪念~

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 ロイスが、背中の痛みに耐えながら立ち上がる。 「三百二十五戦、三百二十五勝。まだまだだな、ロイス」  ネフィは楽しげに言った。  ロイスは毎日、こうして稽古と称し、勝負を挑んでいた。  発端は約半年前のロイスの一言。 「外の世界が見たい」  これまでロイスは、一度も街の外に出る事を許されなかった。  その訳をロイスは知らなかったが、それは自分を魔物等から遠ざけるためなのだろう、と思っている。  だが、ロイスにとってこの街だけの生活というのは、いい加減窮屈過ぎた。  海と接した街というのが、余計にそうさせたのかも知れない。  とにかく、その胸の内をネフィに伝えると……。
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