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血染の桜の民話
いつの世であったか戦があったそうな。血で血を洗うような戦いの末、敗走した武者はその桜の下で息絶えた。
それ以来その桜は一際深い紅に染まり、武者の霊が現われるという。
「で、これがソレ?」
ランドセルのまま二人は小さな山の上にいた。
本当に小さい山で、古い石段を30も上れば頂上だ。
その上に桜の巨木がある。
紙垂付きの注連縄が引かれているのがいわく付きの雰囲気を出している。
「・・・出てきそうに無いね」
苦笑して一純は呟いた。
「無理だろ」
圭吾もずばっと切り捨てた。
「枯れてるし」
「帰ろっか・・・」
「だな」
桜は新しい枝を付けることなく、枯れはてた姿を晒していた。
「あ、干からびた落ち武者とか出たりして」
「なんのコントだ」
カラスの鳴き声が黄昏の空に響いた。
『血染めの桜』完
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