9人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は冷えますね」
前の方から声がする。
がたがたと馬車の走る音に、ザーザーと叩きつけるように降る豪雨。
「えぇ……本当に寒い」
僕は適当に相づちをうつ。
「王、体だけにはお気をつけて下さいます様……お願い致します」
「分かっている」
僕からしてみれば、そんな会話よりも、運転に集中してもらいたかった。
だから、そっけなく返事をしていたというのに。
「王が倒れてしまわれましたら……国民が困りますので」
しつこく何度も何度も言ってくる。
「なんでしたら、そんな花など私どもに申し付けて下されば、買いに行きましたのに」
「それじゃ意味がないんだよ」
僕はだんだん腹が立ってきた。大切な君の好きな花。それを『そんな花』と呼ぶ。
「そういう事は城で聞く。だから急げ」
僕は冷たく言い放った。すると、大きくため息をついて、馬車のスピードを上げた。
最初のコメントを投稿しよう!