9人が本棚に入れています
本棚に追加
外を見つめたまま、私は何も言わず、ただ立っていた。
メイドも静かに、何も言わず立っていた。
静かな沈黙。
「まだですか!?」
そんな沈黙を破る、外から聞こえる無粋な声。私はチッと聞こえる様に舌打ちをした。
「女王様……今なら間に合います!! こんな事……お止めになっ」
「もういいんだ」
私は彼女の言葉が終わる前に、笑顔で伝える。
「ありがとう」
私は彼女の顔を見つめ、まっすぐに伝えた。彼女は一瞬目を見開いて、静かにうつむき、
「礼を言われる様な事など……私は何もしておりません」
と、首を振りながら言った。
「いや……最後まで私を女王と呼んでくれたではないか。それだけで、嬉しいのだ。最後まで、私を私として生かしてくれた」
「女王様……」
「そして、私を私として長生きさせようとしてくれた」
私は、静かにマントを羽織る。そしてメイドに向き合い、静かに頬を撫でた。
「それだけで十分だ」
最初のコメントを投稿しよう!