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病室の窓からは空き地が見え、そこを数匹のコウモリが飛んでいた。
その飛び方は独特で他の鳥にとは明らかに違う。
草が伸び放題の地面から、そう離れていない夕焼けの空を、羽ばたくと言うよりも、必死に空を掻くように、けれども楽しそうに飛び回っている。
でも、その姿は赤い夕闇に紛れて、目を凝らさないと、見逃してしまいそうになる。
私は空っぽの心でまばたきすら忘れて、それをただひたすら見ていた。
ゆっくりと過ぎ去る時間を確認するかのように、その移り変わる空の色を。
そして、段々と空は夜の闇へと飲まれていく。
……その時。
――ドンッッ!!――
静寂の病室に、突然のその音響く。
私の身は跳ね上がり、背筋が一瞬凍る。
それはどうやら、窓ガラスに何かが激突した音のようだった。
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