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真後ろまで来た男は、私の肩にそっと手を置いた。
するとそこを中心に悪寒が体中を駆け巡り、冷や汗が噴き出した。
しかし……私の恐怖と言う名の好奇心は、男の姿を確認せずにはいられない。
緊張で体中がこわばっている。
必死に首だけ動かそうとするが、骨やその周りの筋肉が耳元で音をたてて軋む。
それをどうにかやりすごし、やっとの思いで振り向いた。
そこには……やはりあの男が、闇に溶けこむように佇んでいた。
やっと姿を現した蒼い月の淡い光が射しこむと、男を照らしその顔を露にした。
病的な程に白い肌。
西洋人のように影の深い顔立ち。
真っ黒の髪に、真っ黒の瞳。
鼻筋の通った高め鼻。
まるで口紅を塗っているかのような赤い唇。
華奢で長身な体は、黒い服を着ているせいで、まるで闇を纏っているかのようだ。
……そのいで立ちは不気味なほどに妖艶で美しい。
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