退院希望者

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「なんだかお化けに詳しいんですね、もしかして見えるだけじゃなくて除霊も出来る人? 霊媒師なの?」 「いえ、職業柄ちょっと齧ってるだけです」 「職業柄? 僕と同じ高校生くらいかなって思ってました」 「合ってますよ、ちょっと変わったバイトをしてまして」 「へぇー、良かったら話を聞きたいなぁ」 遠慮がちに願い出た彼の要求を断れはしなかった。 この半年で経験した自分でも信じられないような現象を、舌が踊るようにとめどなく話していく。 マスターの話に始まり、巡りに巡った心霊スポットを一つ一つ解説する。 彼は目を丸くして驚いたり、小さく笑ったり、青ざめて脅えたり、語り手を喜ばせる素晴らしい観客となって傾聴してくれた。 多分、この時の俺には、こんな平和過ぎる気晴らしが必要だったのだと思う。
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