退院希望者

9/28
前へ
/2686ページ
次へ
長髪で色白なせいか、どことなく女っぽくてひ弱そうだ。 薄幸の佳人という言葉があるが、彼には薄幸の美少年という言葉が似合う。 初対面で、そんな失礼な感想を抱きつつ、俺は口を開いた。 「ここの患者さんですか?」 「うん、見ての通りだよ」 「貴方にもあれが見えるんですか?」 指差した先にいるそいつは、未だに俺にご執心の様子で立ち去ろうとしない。 「追われている人は初めて見たけどね、でも凄いや、君の右手はおばけを近づけさせない力があるの?」 「まさか、手の届く範囲に来たらぶん殴るって念じてただけですよ、本当はもっと物騒な事を考えてましたけど喋ると放送コードに引っ掛かるので控えておきますね」 「あはは、なにそれ、そんなんで近付いて来なくなるんだ」 「ああいう連中も元は人間なら、暴力は怖いはずですから」 「あはははは、そうなんだ」
/2686ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37150人が本棚に入れています
本棚に追加